「たまにおもうんだけどね」
「何?」
「こうして電話で話してるとさ、君がそこに本当にいるのか、って」
「失礼だな君も。僕はここに居るよ」
「だって君の姿が見えない限り、機械が発した音か、自分の脳内の声なのか、本当に君と話しているのか、分からない」
「それなら」
「何?」
「君はその内言い出すよ。自分が対峙している僕は、本当に生きているのか、人間なのか、って」
「うん。ねえ、他人が生きて思考する事はどうやって分かるのかな。もしも完璧に人間に似せた機械が、完璧にプログラムされて多種多様な人間みたいに話す。触らないでどうやって人間と見分けるの。僕自身だって、人間だと思い込んでる機械かもしれない。ねえ、周りから人間と認識されていた人がさ、ある日突然壊れて、機械だと判明したとしたら、その機械は人間?それともただのロボット?」
「ねえ、そう云う失礼なこと言ってると、切るよ」
「ごめん」
「大丈夫、僕と君が人間だろうとロボットだろうと、ふたりとも同じものだから。僕と君が壊れる時、あるいは死ぬときはきっと一緒だから。ロボットだろうと人間だろうと、周りの人以外が知る事は無いよ。死んだ僕たちには無関係」
「気にする事ない?」
「そうさ、気にする事ない」
「ありがとう、おやすみ」
「おやすみ」
-双子の回路-