「あのさあ」
「何、また考え事?久し振りに会ったって言うのに」
「ごめん。でも仕方ないよ、考えてしまうものは考えてしまうんだ」
「そうかそうか、じゃあ聞いてあげるよ。情報の共有を、しよう」
「ありがとう」
「それで?」
「うん、今日はね、色について考えてたんだけど」
「ふうん」
「この林檎、林檎があるだろう?」
「うん、紛うことなき、まさしくもって林檎だ」
「林檎の色は?」
「あか、だろう」
「そう、赤だ。この色は赤。でも、君が見ているこの赤は、果たして僕が赤と認識している赤と同じなのだろうか?」
「ややこしいな」
「つまり、君が見ている赤は、僕が青と認識している色でありはしないか、って事だよ」
「なるほどつまり、互いにこれは赤だ、と納得して認識している色が、いざ他人の目を通して見てみたら、その人の目には自分が違う色だと認識している色で映っていやしないか、って事かい」
「そんな所だよ。それでもやっぱりこの色は、どっちにとっても赤、な訳だよ」
「でも、例えそうであってもさ」
「うん」
「他人の目を覗くことなんて不可能だろ?」
「そうなんだよ」
「しかも皆、色の名前は知ってるし、ほら、覗けないなら自分が全て。全然不自由じゃないし」
「そうそう」
「意味の無い思考だね」
「はっきり言ってくれるよね」
「それはそうと、映画を観に行かないかい」
「名案」
「楽しみだよ」
「何が?」
「君の視界を想像するのが、さ」
きみは、ぼくのどのいろで、せかいをみていますか?
-双子の視界-