: 02 :

夢を見た。
私はひとりでただただ立ち尽くしている。視界を遮るものの一切無い荒野。
沢山の案山子が、両脇に並んで道を作っている。
前に、後ろに、いつの間にか、案山子の道が。

私はその道を歩く。
なにやら案山子が動いているようで気味が悪い。
どうにも案山子の頭が血に濡れているようで気味が悪い。
まるで死体が串に刺さっているようで気味が悪い。
あるはずの無い視線、視線、ただ見ているだけの。
私は案山子の顔を見ようとしない。

私が通り過ぎた後で、ひとつの案山子が倒れた。根元が腐っていたのだろう。
ぐちゃり。嫌な音がする。振り返ってはいけない。
私はひたすら歩き続ける。
ぐちゃり。嫌な音がする。すぐ後ろで。足元に赤黒い液体が忍び寄る。
振り返ってはいけない。
ぐちゃり。すぐ横の案山子が倒れ掛かった。何とか避けた。

ぐちゃり。斜め前の案山子が倒れた。
私は叫ぶ。
見てしまった。
根元の腐った案山子の顔を。
こちらを、じっと見ていた平面の顔を。
木の玉に布を被せただけと言うのに、顔と判断できてしまった顔を。

血に塗れて無表情に私を見ていたその顔は、まぎれもなく。

 :終: