: 今は後悔している :

 君が君であろうと無かろうと、そんなことはどうでも良いのですよ。要するに、私が君を君と認めるかが問題なのであって、私にとって君の中身、精神性なんてものは唯一無二ではないのですから、安心なさい、君がどんなに違った性格で何人いようが、君が私にとって君であることに代わりは無いのです。おや、私にとって自分の中身が可変であることに、今の自分で無くともいいことに傷つきましたか?それは可哀想に、ですが得てしてそんなものですよ、人の関係なんて。ああ、ああ、それすら分からずに、安易にこんなに増えてしまって。大変ですねえ。君は本物を探してごらんと言いますが、ねえ、君自身に君の本物は分かっているのでしょうか。ああ、そうですか、それは失礼を。まあでも、そんなの私には関係ありませんしね、先ほど云ったとおり。まあたまにはこういうのも面白いですかね、付き合ってあげましょうか、君のお遊びに。
 さてさて、では私は一体どうやって本物の君を見つければ良いのでしょうね。やはりここは、ひとりずつ殺していくのが妥当でしょうかね。ええ、分かりますか?私は今とても、楽しいですよ。だって、今までひとりしか居なくて殺してみたくても殺せなかった君が、今こんなに居るのですから。何人いるのでしょうねえ?ああ、楽しみですよ。色々な性格の君たちは一体どのような声で、どのような顔で私に命乞いをして死んでゆくのでしょうね。ああ、もちろん全員殺しはしません、最後のひとりだけは殺さずに居ておいて上げますよ。そうすれば否応なくその子が本物の君ですからね。ねえ本物の君、見つけて欲しいのでしょう?ならば頑張って私に殺されないように逃げて、存分に自分の死体を目の当たりにしてくださいね。ああ、自殺はいけませんよ、君が始めたのですから。まあ、君には武器も何も無いでしょうから、無駄な心配でしたか。
 安心してくださいな、最後に残ったのが本物であろうと無かろうと、私にとってそれは紛れも無い君なのですから、今まで通りお相手しますよ。まあ、私には本物の君が分かっていたとしても、ええ、中身が変わっていようがそんなことはどうでもいいので、多分手当たり次第に殺していきますが。元と違っていたとしても、それはそれで、面白いですからね。君が私にとって君であれば、私はそれでいいのです。君のことが大好きなのも、変わりません。後始末もご心配なく。全部冷凍して保存して、少しずつ食べてあげますからね。
 さあ、では、そろそろ始めましょうか。ふふ、楽しみましょうね。

(そんなこと云って、彼には確実に僕が本物だとわかっている)
(わかった上で、僕だけ残している)
(ああ、またひとり、僕が死んでいく)
(何でこんなことしたんだっけ)

 :終: